パンドラの匣

太宰さんの「パンドラの匣」読みました。

パンドラの匣 (新潮文庫)

パンドラの匣 (新潮文庫)

今回読むの2度目。
川上さんの女優デビュー作でもあります。
映画は見ていませんが、読んでおこうと実家からだいぶ前に持ってきていました。
2010-04-27 理想を語ろう! - なんやかんや
昨日、起きたらいい天気、出かける気になったら、曇ってきてまた晴れて、雲って。
モウー、ってことで部屋で読書に切り替えたわけです。
結局雨降らなかったので、出かけても問題なかったのですが、
読書ができてよかったと言うことで。
一部引用します。

本当にもうこれからは、やたらに人を非国民あつかいにして責めつけるような気取ったものの言い方などはやめにしましょう。この不幸な世の中を、ただいっそう陰鬱にするだけの事だ。他人を責めるひとほど陰で悪い事をしているものではないのか。こんどまた戦争に負けたからと言って、大いそぎで一時のがれのごまかしを捏造して、ちょっとうまい事をしようとたくらんでいる政治家など無ければ幸いだが、そんな浅墓な言いつくろいが日本をだめにして来たのだから、これからは本当に、気をつけてもらいたい。二度とあんな事を繰り返したら世界中の鼻つまみになるかも知れぬ。ホラなんか吹かずに、もっとさっぱりと単純な人になりましょう。新造の船は、もう既に海洋にすべり出ているのだ。

前回の衆院選で引退した、津島派津島雄二さん、バッチリ関係者です。
政治家に対する不信、今も変わりませんね。
これ戦後すぐ書かれています。

日本の明治以来の自由思想も、はじめは幕府に反抗し、それから藩閥を糾弾し、次に官僚を攻撃している。

あれ?
官僚批判って明治時代にもあったてことなんですね。
官僚さんたち、政治家よりよっぽど堅牢。要塞のようなんですね。


て、本当はこんなことが書きたいわけではなくて、
太宰さんの文書、何時読んでも素敵です。
登場人物が皆さん魅力的。
恋心の書き方も秀逸。
本人が発する言葉だけではなく、

「ひばりには、とてもよく似合うわよ。マア坊は果報やなあ。帰りに一緒にオバさんとこでお茶を飲んだってな。」
 やはり、夢ではなかった。
「竹さん、おめでとう。」と僕が言った。
 竹さんは返辞をしなかった。黙って、うしろから寝巻をかけてくれて、それから、寝巻の袖口から手を入れて、僕の腕の附け根のところを、ぎゅっとかなり強く抓った。僕は歯を食いしばって痛さを堪えた。

参りました。
でも、本当に透明感のある作品になっています。
ある一線を越えて書かない上手さ。
そこがポイント、それ感じました。
今回は、映画に出演していた、川上未映子さんと仲里依紗さんがこの役なんだとイメージがついてしまったのが良いような悪いような。
上で引用した、竹さん川上さんが演じた役で、マア坊仲さんが演じた役、たぶんそうだと思います。
この辺、私が下手に書いてしまうと、作品を台無しにしてしまいそうなので遠慮してしまいます。
気になった方は、青空文庫でも読めますので、作品読んでください。

図書カード:パンドラの匣
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card1566.html
映画も見たくなりました。
封切り館の多い映画ではなかったので、TVではやらないかな。
DVD借りるしかないかもです。

パンドラの匣 [DVD]

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まだ、発売になっていないのですね。
DVD発売日: 2010/08/04