中小事業主用労災保険特別加入制度について

通常事業主や事業主の家族従事者等は労災保険に加入することが出来ません。しかし事業主とはいえ社員と同じような仕事をしている事業主も沢山いらしゃいます。同じ仕事をして怪我をしているのに、社員には労災が出て、事業主には出ない。これって事業主かわいそう。そう思いませんか?
 国側にもそういう思いがあって、中小事業主に対応する、労災保険があります。それが今回ご紹介させていただく、「中小事業主用労災保険特別加入制度」です。


  加入のための条件
1、企業規模

2、その事業について労災保険にかかわる保険関係が成立していること。
 つまり、事業主のみ、又は事業主と奥様の2人で営業している場合等、労災に加入する用件が満たされていないのでこの制度の利用はできません。
 正社員がいない場合で、パート・アルバイトのみであっても、その方たちを労災に加入させる義務が事業主には発生します。1人でも労災に加入していれば、事業主さんもこの制度利用することが出来ます。
3、労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。
 労働保険事務組合とは?
厚生労働省のホームページから引用すると

事業主の委託を受けて、事業主が行うべき労働保険の事務を処理することについて、厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体です。

と書かれており、事務組合に委託できる事業規模は、先ほどの特別加入制度を利用できる事業規模と全く同じです。
 商工会議所・青色申告会・社労士の団体や、板金業とかクリーニング業とか業界ごとに作られていたり、商店会で運営している場合もあります。
  保険料
 社員の労災保険料についてはその方の年収を元に計算されています。特別加入制度を利用した場合の事業主の保険料の年収の考え方には特徴があります。
 仕事上の事故で、休業4日目から支給される休業に関わる給付、障害・介護・死亡・遺族に関わる給付等の日額を事業主ご自身で、25,000円〜3,500円の21,500円の範囲で16種の日額が用意されていて、その中から選びます。その額を365倍して年額を計算します。この年額のことを保険料算定基礎額といいます。この時、特別加入者全員の保険料算定基礎額を合計した額に千円未満の端数が生じた場合は端数切捨てとなります。
年間保険料の計算式は、以下となります。

保険料率につきましては業種によって88/1000〜2.5/1000の範囲で変わってきます、お手元にあります、この↓

タイトルの書類に記載されている太い赤で囲んだ部分が貴社の労災保険料率になります。*1

この率に関しては当然社員も、事業主も同じ率が適用されています。
この事例の3.5/1000は「卸売り業・小売業、飲食又は宿泊業」に適用されています。
この場合の年間保険料の最高額と最低額計算すると、31,937円〜4,471円の間となります。


  特別加入者の業務災害

通勤災害につきましては、一般の労働者と同様に扱われます。


  注意事項
1、特別加入制度は、事業主が社員と同じような仕事をしていて、災害にあった時社員が認められる状況で、同じ仕事をしていた事業主も認められる可能性が高くなります。勿論労災の認定は厳しいので、たとえ社員であっても認定されない場合もあります。その場合当然事業主も認められない可能性が高くなります。
 では、社員はしないような仕事、例えば銀行に融資を求めに行くような事業主しか、しないような仕事中に事故にあった場合、残念ながら特別加入していても労災認定されない可能性が高いです。
 では、事業主が通勤途中で自分の生活費をおろすため銀行に立ち寄った場合、銀行の駐車場に入ってから出るまでの間は認められないことになるでしょうが、銀行を出て通勤途上で事故にあった場合、労災認定される可能性がありあます。社員も生活費は通勤途上でおろしますね。通勤災害は事業主も社員も同じ扱いになります。
2、2つ以上の事業をされている事業主の場合、それぞれの事業でこの特別加入をしておかないと、特別加入をしていない事業で事故にあった場合支給されません。
 例えば、建設事業と不動産業していた場合などです。この例ですと、保険料率も15/1000と2.5/1000でだいぶ年間保険料も違ってきます。


  特別加入制度のしおり<中小事業主用>
労働基準監督署で無料でもらうことが出来ますが、厚生労働省のホームページで見ることもダウンロードすることも
出来ます。全部で16ページです。
この↓用語入力して検索していただき。

一覧の中にある、PDFと表示されているこちら↓選択していただくとすぐ読めます。

表紙です。

今回ここに掲載した内容もこの資料の一部使っています。



先月から社労士になって、まずこの労災特別加入制度の紹介から始めています。

*1:3.5の部分は私が赤で囲んでいます。元の書類はこんなふうに太い赤で囲まれてはいません