今日は2作品。
どちらも、昨日文藝春秋で芥川賞の選評読んで読みたくなりました。
昨日のうちに「天空の絵描きたち」は読みました。
木村友祐さんの作品ですが、単行本が発売されておらず、
この作品収録されている「文學界」2012年10月号を図書館で入手しました。
上の文学界表紙の画像ご覧ください。創作の後ろに有名作家さんの名前出て、最後に ほか とあります。
この号の目次で創作に書かれている作家さんで表紙に名前が出ていないのは、
木村友祐さんだけ、だったら表紙に名前入れたらいいのにね。
ほか を作ることで『盛沢山』感を出したかったのかもしれませんね。
木村友祐さん私は全く知りませんでした。
Wikipediaリンクしておきます。
高層ビルの窓ふきのお話なのですが、
私の知らない世界なのでとても興味深く読むことができました。
作者の視線にも共感持てました。
そしてもう1作品
「百の夜は跳ねて」古市憲寿、は本日、掲載された2019年6月号の新潮を図書館で読みました。
この作品今回(161回)の芥川賞候補作の一つです。
単行本出ています。
この作品の参考文献の中に「天空の絵描きたち」が含まれています。
選考委員の山田詠美さんは候補作の「百の夜は跳ねて」より「天空の絵描きたち」の方を称賛している選評を書かれていて、「天空の絵描きたち」が初出の文学界2012年10月号でしか読めないことを惜しまれていて、単行本化(文庫でも良いのでしょうが)を求めるコメントまで書かれていました。
両作品読んでしまうと、山田さんも言われているように、木村さんの作品の方が「高層ビルの窓ふき」1点突破のストレート感が良いです。
手元に文藝春秋最新号ないので名前は忘れてしましましたが、
他の選考委員の方も、この参考文献中の「天空の絵描きたち」気になって読んだこと書かれていました。
選考委員の方たちの真剣さもわかりました。
私は、先に「天空の絵描きたち」を読んでしまったので、「百の夜は跳ねて」の高層ビルの窓ふきの記載部分新鮮さ感じませんでした、先にこの作品から読んでいれば、共鳴できる部分もっと多かったと思います。
「百の夜は跳ねて」は窓ふき以外の部分をかなり書かないと、参考文献を超えられないので、書いているけど、窓ふき部分やはり魅力的です。
そうなると、余計「天空の絵描きたち」がすばらしく感じてしまう。
でもこの作品は芥川賞候補にもならず、単行本も出ていない。
作家さんの人数も多いので、こんな事例は沢山あるのでしょうが、芥川賞候補を選ぶ方達の目も大切ですね。
参考までに、この作品の掲載時期に合わせて行くと、第148回芥川賞ということになります。受賞作と候補作リンクしておきます。
でも古市さん、本読みですね、おかげで私は「天空の絵描きたち」に出会うことができました。
別件ですが、「天空の絵描きたち」文學界の掲載ページで119P
皇室の子どもも通う私立の小学校らしい。~略~ 民家を改築したレストランのようだった。
読んでいて、まさか最近行ったあそこ、やっぱりだ!
みたいな感じ味わいました。作品中に知った場所出てくると嬉しくなりますね。
後記
今、手元に文藝春秋最新号あります。
山田詠美さんの「天空の絵描きたち」への選評部分引用します。
そして、びっくり!極めてシンプルで、奇をてらわない正攻法。
~中略~
「天空の絵描きたち」の書籍化を望む。
山田さんの選評は毎回読んでいて心地よいくらいのストレートな表現だなと、私は感じています。今までの受賞作でもここまでほめることはあまり見ていないような?
今回どの候補作よりも、この作品ほめているように感じました。
ただし、受賞作の「むらさきのスカートの女」の選評の最後の部分引用すると。
見事だと舌を巻いた。
すごくほめていますね。
それと、「天空の絵描きたち」選考委員の中で読んだ方で、
私の記憶にあって思い出せなかったのは、
川上弘美さんでした。
選評一部引用します。
木村友祐さんの声が、そのまま「百の夜は跳ねて」の中に、消化されず、ひどく生のまま響いていると、強く感じてしまったからです。
私もこのようなことが言いたかったのですが、うまく書けませんね。
忘れていましたが、他にも、吉田修一さんも堀江敏幸さんも「天空の絵描きたち」読まれたようで、選評で触れています。
宮本輝さは読んでいなさそうです。
選評一部引用します。
高層ビルの窓拭きを仕事とする青年だけを書けたら、受賞作の対象となっただろうという気がした。
青年だけを描いたら「天空の絵描きたち」(こっちは主人公女性です)と変わらなくなってしまいますね。宮本さん読んでなくても本質しっかり見抜いている感じします。
奥泉光さんは「百の夜は跳ねて」一番推しされたそうです。
外にあるさまざまな言葉をコラージュとして小説を作る作者の方向を、小説というのは元来そういうものであると考える自分は肯定的に捉えた。
~略~
複数のかたまりの交錯のなかから、都市空間の「手触り」ともいうべきものが浮かび上がるあたりは面白く読んだ。
私もこの選評、引用の前半部分は思いもつきませんでしたが、その通りだと思います。ただ今回はそれでも未消化だったと思います。
後半の部分は言われてみればそこ私も面白く読みました。
選考委員の方たちのも、159回芥川賞候補作の「美しい顔」
の件今回の選考で頭をよぎったかもしれませんね。
タイトルのことなのですが両作品比べると
「天空の絵描きたち」作品読むと木村さん素晴らしいタイトル付けられたと思います。
ここから先書いたのは、8月14日です。
吉田修一さんの選評が心に刺さっていたので全文引用します。*1
「百の夜は跳ねて」
なにより主人公の凡庸な価値観に唖然とする。タワーマンションの上層階に住んでいるのが上流で、下層階は下流?高層ビルの中で働いている人が優秀で、外で働いている人が劣等?もちろんこのような凡庸で差別的な価値観の主人公を小説で書いてもいいのだが、作者もまた同じような価値観ではないかと思えるふしもあり、とすれば作家としては致命的ではないだろうか。あと、参考文献に挙げられていた木村友祐氏の佳品『天空の絵描きたち』を読み、本作に対して盗作とはまた別のいやらしさを感じた。ぜひ読み比べてほしいのだが、あいにく『天空の・・・』の方は書籍化さえされておらず入手困難であり、まさにこの辺りに本作が持ついやらしさがあるように思う。
無名であることが蔑ろにされるべきではない。たとえそれが現実だとしても、文学がそこを諦めたら終わりじゃないかと自戒の念も込めて強く思う。
まいりましたね。吉田さんが指摘する凡庸で差別的な部分読んで私は何も思わずそのまま受け入れていました。この部分に違和感を感じた吉田さんの意識。私も持てるようになれたら素晴らしいなと思います。
ここまで書いて思ったのですが、古市さん参考文献として『天空の絵描きたち』を使いたいほどこの作品が大好き、自分の作品がそのことによって問題になるかもしれないけどそれを承知の上で使いたいほどリスペクトしていたのではないか?そんな気がしてきました。今回の選考委員の方たちもおそらく知らなかったでしょうし。芥川賞の選考委員の目には当然止まったでしょうが*2候補作にならなかった。その作品に古市さんは2012年10月号の掲載から約7年ズート気にして『百の夜は跳ねて』に反映した。だから川上さんの選評にあるように、
消化されず、ひどく生のまま、響いていると、強く感じてしまった。
こういう指摘されずに済むように書くことができなかった。書くことができればよかったのにと、私も思いますが、不可能だと思います。『天空の絵描きたち』さっきも書きましたがタイトルも良いし私は、古市さんがこの作品を教えてくれたこと感謝します。
凡庸で差別的の指摘をした吉田さんの選評も、直積的ではないにせよ木村さんのこと無名と書いていますね。木村さん傷ついたかも。
上にウィキペディアのリンクありますが、リンク先から引用します。
2009年(平成21年)、『海猫ツリーハウス』で第33回すばる文学賞を受賞。
2012年(平成24年)、『イサの氾濫』で第25回三島由紀夫賞候補。
2013年(平成25年)、管啓次郎、小野正嗣、温又柔とともに高山明演出の演劇プロジェクト「東京ヘテロトピア」に参加し、東京のアジア系住民の物語を執筆。
2014年(平成26年)、『聖地Cs』で第36回野間文芸新人賞候補。
2016年(平成28年)、『イサの氾濫』で第38回野間文芸新人賞候補。
著作も5作品あり一般人から見たら、十分有名人です。*3
吉田さん古市さんの木村さん作品に対する『いやらしさ』に思わず筆が滑ってしまったのでしょうね。
いま出版不況でなかなか書籍出しにくい現状ありますね。できることなら、次作品で木村さんが芥川賞候補作を書き、そのまま芥川賞受賞して、その書籍に『天空の絵描きたち』も収録される。そんなことにならないかなと期待しています。
木村さんと古市さんと芥川賞W受賞でこの件に関し2人でニコニコしながら受賞会見で話す。なんて光景いいかもしれませんね。
後述
ここから先書いているのは9月1日です。
今日の朝日新聞、朝刊東京本社14版20面ここに書いた内容で記事が出ていました。
一部引用します。
古市作品を発行した新潮社によると、古市さんから高層ビルの窓ふきの人を主人公にしたいと提案された編集者が、窓ふき職人を描いた作品があり、東京スカイツリーなどで清掃経験のある木村さんにベテラン職人の紹介を依頼。取材には木村さんも同席し自身の経験を語ってくれたという。
新潮社の文芸誌の編集者の方は、文藝春秋社の「文学界」を読んでいた。ということで、本読みは古市さんではなくて、担当編集者さんだったのですね。
なんか納得です。
木村さん、古市作品の取材対象者でもあったようです。
これは、木村・古市の芥川賞W受賞楽しみです。
ここから先書いているのは2020年1月1日
令和最初の元旦です。
「天空の絵描きたち」を収録した単行本発売決定です。
木村友祐さん第162回芥川賞の候補になりました。
「幼な子の聖戦」すばる2019年11月号掲載です。
木村さんデビューは
2009年(平成21年)、『海猫ツリーハウス』で第33回すばる文学賞です。
この作品が単行本になるにあたり。「天空の絵描きたち」も収録されることになりました。
この作品まだ読んでいませんが芥川賞の発表は1月15日です。