文学の藪の中

昨日の続きになります。
私の読んだ本のほとんどは、今住んでいるところにはありません。
実家にあります。
連休で実家に来ているので、
本を手にしています。


パパラギ」を読んでから、「清貧の思想」を読むまで、
14年あいていました、
多分この2冊は14年の間をおいて、私の中で結びついていったのでしょう、
衝撃という意味では「パパラギ」の方が強かったです。
その後の展開は、「清貧の思想」ですね。
前にも書きましたが、
西行とか「清貧の思想」に書かれている人たちの本、
何冊かその後読みましたから。


昨日書いて心配だったのは、
「この映画で文学は毒だ見たいな事言っていた記憶があります。
素九鬼子という人の原作にもやはり書いてありました。」
の部分です。


実際、今手元に「旅の重さ」(角川文庫)あるので探してみました。
ありました。
主人公の知り合った19の女性が自殺しています。
引用します。
P168に
「たったひとつ、とても気が気でないことがあるの。娘が本好きだったことなの。中学を卒業しただけなのだそうですが、本を読むことが好きで、内職をしながらいつも本を脇に置いていたというのです。そしてその本というのはどんな種類のものだとママは思う?マンガ?恋愛小説?とんでもないのです。東西の立派な文学書ばかりなの。それが殆んど岩波文庫で、内職で得た金で一冊ずつ買い集めたものなの。全部で五十冊はあったでしょうか。わたしなど名前もしらない人のものもたくさんあったわ。」


その後P171から、
「彼女の指先には、糊といっしょにあのドストエフスキイ芥川龍之介やがねばねばしていたのです。彼女はその指先でマッチ箱を貼っていたのです。小さなマッチ箱の引き出しには、人を虜にしてむしばんでゆくあの文学の悪魔がいっぱい詰まっていたのです。娘はその悪魔を手なずけ、からかい、なぶってやる術をしらなかったのです。ああ、かわいそうな貧乏な文学かぶれの娘!」


毒と悪魔違いますが、「毒だみたいな事」と昨日書いているので許してください。
本を読むのは良いこと、ってだいたい子供のころ言われますよね。
でも、「読み方しだいでそうでもないな」
と気付きだしたころ、この本に出会ったような気がします。
こういうこと書いてある本て、それまで出会っていませんでした。


なんか白紙の人間、というか、無垢な人というのは、
やっぱり怖い気がします。
宗教や、政治に
過剰に
入っていける人はそういう人のような気がします。
そういうときに、利用されている本ってきっとありますよね。
真っ黒でも困りますが、
真っ白でも困りますよね、
このころから、私は、ひとつの色に染まって、
世の中が見えなくならないように、
様々な色に染まること、
言って見れば、白でも、黒でもなく、灰色になろうと思っていました。
できれば白に近い灰色ですね。
その分
これしかない
っていう一途さは欠けてしまっているかもしれません。


文庫本の版の日付からみると「赤頭巾…」とほぼ同時期に読んでいるようです。
この本の単行本の初版は1972年です。
本の最後に
この作品の上梓にあたって
の一文があり、
作家の由起しげ子さんが亡くなったときに、
机辺にあった一山の原稿の中に、
大型大学ノート5冊にイラスト付で、
この小説は発見されたそうです。
そのまま作者に会うこともなく筑摩書房から出版されています。
覆面作家としてデビューしているわけですね。
昨日も紹介しましたが、
10年以上前にTVで見たのですが映画もよかったです。
サントラに吉田拓郎
♪わたしは今日まで生きてきました…  という歌が使われていました。
斉藤耕一監督で主演は高橋洋子この少女役秋吉久美子だったと思います。


素九鬼子さんは、「パーマネントブルー」という作品で直木賞候補になっています。
あと「大地の子守唄」という作品もあります。
この2作も映画化されていますが、残念ながら見たことありません。
はまぞうでも引っかかりませんでした。


偶然ですが、素九鬼子さんと、庄司薫さん昭和12年生まれで同じ年です。
ここで気付く方います?
庄司薫さん「赤頭巾…」書いたとき32歳です。
実際は本人は日比谷高校から、東大法学部出ています。
新人の庄司薫でいきなり芥川賞受賞なわけですが、
ついでに付け足すと、
21歳の時に本名の福田庄司で、
第3回中央公論新人賞(1958年)を「喪失」という小説で受賞しています。
この本今手元にありますが、
「赤頭巾…」が出ていないと再版されていないでしょうね。
中央公論としては庄司薫は新人ではなかったわけです。
この本のおかげで私はサリンジャー以外にもう一人の作家と作品に出会います。
第一回中央公論新人賞(1956年)受賞作家、

楢山節考 (新潮文庫)

楢山節考 (新潮文庫)

です。
これは映画のほうが有名かな。
楢山節考 [DVD]
今村昌平監督で1983年のカンヌ国際映画祭グランプリ受賞。してますね。
木下恵介監督もその前に映画化しているみたいです。


これ以上書いていると、試験前なのに「文学の藪」から、
出てこれなくなりそうなので、このへんにしておきます。
実家は資料がたくさんあるので、
ネタ多いです。


最後に一言、
さすがにここまで時代が古くなると、
書いている本人の生まれる前の時代に突入しています。
でも嘘は書いてないはずです。
違うところ気付かれた方、ご指摘ください。