さよなら、愛しい人

レイモンド・チャンドラーさんの「さよなら、愛しい人」読みました。
2011-01-16 長いお別れ - なんやかんや
の終わりのほうで書いたように、今回は村上さんの訳で読みました。

さよなら、愛しい人

さよなら、愛しい人

この本、まだ文庫は出ていないようです。
16日になんやかんや更新したあと、
横浜市、市立図書館のホームページから、予約入れて借りてきました。
ホントに便利です。
ただ、レイモンド・チャンドラーさんの文章に「長いお別れ」で慣れてしまったせいか、こっちの作品は新鮮さ、そんなに感じませんでした。
ただ主人公のマーロウさんこっちの作品の方が活動的です。
でも、どっちの作品も、酒とタバコがよく出てきます。
村上さんの後書き読んだら、
「長いお別れ」刊行が1954年
「さよなら、愛しい人」刊行は1940年
14年違いがあります。
作者のレイモンド・チャンドラーさんの年齢に合わせて、マーローさんの活動もおとなしくなったようです。


今回は、村上さんの「あとがき」373Pの終わりから、374Pの前半にかけて引用します。

 しかしいざ翻訳するとなると、チャンドラーの凝った描写文体は時としてまことに厄介な代物である。癖があるというか、論理的・整合的というよりはむしろ気分で書いているところがあって(そういうところはフィッツジェラルドの文章に少し似ているかもしれない )、しばしば頭を抱え込まされる。すらすらと読んでいるぶんには「なんとなく気分的にわかる」のだが、細部をできるだけ正確に日本語に置き換えようとすると、だんだん頭がこんがらがってきて、「ここまでややこしく書かなくてもいいだろうに」とつい愚痴も言いたくなる。だいたいそんな筋には直接関係のない描写をいくら丁寧に訳しても、読者の大半は適当に読み飛ばしてしまわれるだろうし(失礼)。しかし逆にいえば、そういう枝葉末節を「ああでもない、こうでもいない」と時間をかけていじくりまわすのが、翻訳の醍醐味のひとつなのかもしれない。

こんなこと書いていますが、村上さんの文章にも当てはまると思うのですが、いかがでしょうか?
違いは、チャンドラーさんが、気分で書いている部分、村上さん計算して書いていると思えるところでしょうか。
村上さん、こう書いていますが、チャンドラーさんもしっかり考えて書いているのかもしれません。
私は、村上作品の筋には直接関係のない描写が丁寧なところも魅力の一つだと思っています。
作品からも一部引用します。29P

「すきな方を選んでくれ」と私は言った。「聖書を一章よんであげてもいいし、酒をいっぱいおごってもいい。どっちがいいかね?」
「ブラザー、私はできれば家族と共に聖書を読みたい」、そのきらりとした目は、ひきがえるのようにじっと動かなかった。

「どっちがいい」って聞かれて、どっちにも答えない。
これって、なかなかできることじゃないし、その断り方が素敵です。
相手の気分を損ねずに断る。
こういう機転の利いた受け答えが即座にできる能力身につけたいものです。
実際、二者択一で、どっちも嫌な時ってたくさんありそうですね。
本当に二者択一の時って相手の罠にはまっているだけで、本当はそんなに多くないのかも知れませんね。
視点を自由に持って第3、第4の選択肢を見つけていく能力も身につけておくと生きていくうえでとっても役に立つと思います。
昔書いた文章思い出しました。
2005-08-12 360° - なんやかんや
前半部分引用します。

ある物事を変化させようとします。
たとえば、郵政を民営化しよう。と言うことです。
そのときある案があって、決めようとした時は、
賛成か・反対かと言うことになりますよね。


でもある案を作るときは、右か左か、だけではなくて、
上か下か、もあるわけですし、右に13.2㎝ 動かすとか、
100人いたら100通り、
ある物事を360°どのようにでも変化させる
提案が出来るはずですよね。
それをこれしかないとか、この3通りの中から1つ選べとか言うのは、
ずるいと言うか、選択肢少なすぎだし、
自分の都合のいいように変えようとしている感じですね。


あと、賢いというかずるい方法として、
本当は右に45°動かしたいんだけどそれだと皆が反対しそうなので、
とりあえず右に10°で提案して賛成してもらって、
後から45°にするって方法ありますね。
動き出すときは抵抗大きいけど、動き出すと何とかなったりしますね。
物理学でも共通です。


本題に戻って、
もう一箇所引用します。
53P

しかし私の預金残高は、水面下で必至にあひるの水かきのようなことをしている。

わったような、わからないような表現ですが、とってもよくわかりますよね。
だって、、預金通帳が必至に水かきしても預金は増えない。^_^;
まして今は低金利の時代です。
やらなきゃいけないのは、通帳じゃなくて、自分ですね。