希望の国のエクソダス

村上龍さんの「希望の国エクソダス」昨日一気に読みました。

希望の国のエクソダス

希望の国のエクソダス

読んだのは、図書館で借りた文庫のほう。
希望の国のエクソダス (文春文庫)

希望の国のエクソダス (文春文庫)

買った本処分できずに増える一方。
少し買うの控えようと思っています。
と書くそばから、今日三田誠広さんのこの半年に発売された、単行本3冊も買ってしまった。^_^;


本題。
この本文芸誌ではなく、総合誌の「文芸春秋」に平成10(1998)年10月号〜平成12(2000)年5月号に渡って連載され、
単行本は12年7月に発売になっています。
そして、この小説の最初のシーンは2001年6月初旬(文庫8P)となっています。
つまり龍さんこの小説書いた時点で、全て未来の事を書いているわけです。
2011年の今、読んでいる時、この事実確認していなかったので、どこまでが事実で、どこまでが龍さんの空想なのか判断が付かなかったです。
そう、私の驚きは、この作品を書いた時点で全ては空想であった。
この事実。
龍さんの先見性です。


文芸春秋」連載ということで、読者層も考えたのか、ある程度経済の専門知識が必要な部分沢山出てきます。
主人公は、フリーの男性編集者なのですが、この専門的な部分主人公に語らせない。
主人公と同居している、経済専門の女性記者にほとんど語らせます。
主人公がこういう専門知識バンバン語ってしまうと、付いていけない読者反感持つかもしれません。
そして、主人公には「良くわからないが」みたいなことをしゃべらせています。
この辺のスマートな所すごい。
能ある鷹は爪を隠す
目立つのは、中学生のポンちゃんなのですが、この子の話すこと本当にすごい。
主人公は調整力・協調性・人の話をよく聞く。
そんな感じの人物となっています。


すこし引用します。
99P

ディベートいうのは、言いたいことを言うだけではなくて、お互いの考え方の違いを認めた上で、妥協点があるかどうかを探るというものでしょう。話し合いの形を、ちゃんとしたディベートにするために、暴力は必要だと最初から思っていました。力関係が圧倒的に弱く正義がこちらにある場合に暴力は認められるとチェ・ゲバラが『ゲリラ教程』で言っているんですけど、その点において彼は正しいと思います。それに学校側が想像もつかないような事態を準備しようと思ったし。教師たちが思考停止に陥るような方法というと、ぼくらには暴力しかなかたっす。

私は、暴力に対して否定的です。
龍さんはある程度必要と思っているようで、この作品より後から書かれている、
「半島を出よ」(2005年)

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

でも、北朝鮮のゲリラが福岡ドームを占拠したときに、中で人質になっている人が多少犠牲になっても、その時点で日本も暴力(武力というべきですが)に頼っていれば、こんな事にはならなかった。
というような状況設定がありました。
ただ、私のような人間は本当に守るべき物を守れないのではないか?
龍さんのほうが、理想ではなく、より現実的で、実践的、多くの人を守れそうな気もします。
平和のために会談なんていているうちに、ズドンで終わり。
これは否定できない、けど、武力は嫌な私。困った。^_^;
やっぱりやられちゃうのかな?


ついでに書くと、この両作品、どちらも円の貨幣価値が暴落しているシーン書かれています。
現実は少し違いますね、米国債、格付け下がりそうですし。
ユーロは加盟国の財政危機で下がっている。
最近円は高騰しています。
でも、日本は少子高齢化で、生産人工が減って、国債も発行高も多く、ただでさえ社会保障費増えているのに、原発処理の負担もあります。
高騰しているのが不思議な感じ。安心できません。


287P後半

日銀総裁も大蔵大臣も総理大臣も官房長官もまるで他人事であるかのような語り口で通貨危機について見解を発表した。
基金の流出という事態に関しまして、さらなる情報を収集しまして適切に対処したいと考えております。いわゆる投機筋の、基金びわが国の通貨であります円へのアタックという事態に対しましては周辺各国との協力を密にし、断固たる態度でこれに当たりたいと、考える物であります」

なんかホントこんな見解よく耳にしている気がします。
「断固たる」なんてキッパリ言われると「そうか何とかなるかな?」なんて思ってしまいますね。
この続き引用します。
287P後半〜289P前半

 現段階でどの程度被害が出ていて、誰の責任の下に、どのような対策を実際に実行していて、それがどのような効果を上げ、もし効果が上がっていない場合にはどのような代案があり、対策の効果が上がらずに市場介入に失敗したときには誰がどういう責任をとるのか、というようなことが談話の中で明らかにならない。意図的に明らかにしないのではなく、主語が曖昧なままに話されるのでいったい誰の責任で通貨防衛が行われているのかがわからない。政府といたしましては、日銀といたしましては、大蔵省といたしましては、円へのアタックというような緊急の事態に際しましては、絶対にこれを許さないという断固たる態度を持ちまして、というような語り口では誰が断固たる態度をとるのかがわからないのだ。

どうですか、この部分。
政府以外を通商産業省・東電に変えて今の状況そのものです。
国会で、龍さんに国民代表として、政府、通商産業省・東電にしっかり追求してもらいたくなります。
龍さん現在「文芸春秋」に地震後最初の連載「オールドテロリスト」書かれています。(発売中の8月号が3回目の連載です)どんなメッセージ発信しているのか気になります。


もう少し引用したいのですが、明日仕事なのでもう寝ます。
平日にこの本読むくらい暇だったり、*1連休の土日が仕事だったりします。(だから連休2日仕事なの嬉しいです)
続きまた書きます。
この本の簡単な粗筋知りたい方、どうぞ。
希望の国のエクソダス - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%8C%E6%9C%9B%E3%81%AE%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%83%80%E3%82%B9

*1:本当は暇なんて言っていないで、営業活動をしないといけません。当然やっているときもあります