白痴

三田誠広さんの
[新約]白痴書かれざる物語
読みました。

[新釈]白痴――書かれざる物語

[新釈]白痴――書かれざる物語

まず、この本の目次以前のページに書かれた文章、全文引用します。

『白痴』の創作ノートには、その冒頭の部分に、実際に書かれた作品とは異なる作品の構想が記されている。その構想は作者(ドストエフスキー)によって途中で放棄され、いまわたしたちが読むことのできる作品(原典)が書かれることとになった。これから作者(三田)が読者に提示しようとしている作品は、その放棄された初期の構想をもとに作者が創作した新たな物語であり、原典の物語と直接のつながりはない。しかし原典が担っている哲学や宗教観はこの作品に引き継がれている。さらにいえば原典では隠されている本質的なものがこの作品では見えるようになっているはずだ。これは《書かれざる物語》であるが、書かれた原典から直接に引き出された作品だといっても過言ではない。

三田さん、以前読みましたが、ドストエフスキー作品の『罪と罰』書かれています。
2010-04-29 [新訳]罪と罰スヴィドリガイロフの死 - なんやかんや
この一文読むと、今度の作品のほうがより、オリジナリティーが高くなっているようです。
残念ながら、オリジナル作品どちらも読んでいません。



三田さんの作品、私と相性が良いというより、三田さん自身が、
「多少おせっかいになりかもしれないが読者にわかるようにきちんと書こう」
そういう姿勢があると思います。
科学・宗教・哲学・経済。
小説ではない分野の出版物出していますが、そっちも私はお薦めします。
専門家が書いた本よりわかりやすいと思います。
この作品も、全て理解できているなんて言えないですが、少なくともオリジナル作品を私が読むより、より理解できたと思います。
でも、今回はどれだけ違うか興味もあって、夏休みに前に図書館で『白痴』かりて、休み中読もうかと、今思っています。


少し作品に触れます。
29P
ハンス・ホルバインの
『イエスの屍』
『マイヤー市長の聖母』
という絵画が出てきます。
どんな絵か知らないですが、読んでいるうちにどちらの絵画も何回か出てきます。
なんか気になって、調べました。
『イエスの屍』絵一部になりますが解説つきです。
ハンス‐ホルバイン作「イエス・キリストの屍」
http://www.coara.or.jp/~dost/hh.htm
この2枚の絵、オリジナルの『白痴』の中にも登場するようです。
絵全体はこちら↓を見たほうが良いです。 スイス、 バーゼル美術館 蔵です。

http://www.wga.hu/art/h/holbein/hans_y/1525/03deadch.jpg
http://www.wga.hu/art/h/holbein/hans_y/1525/03deadch.jpg



『マイヤー市長の聖母』はドイツのダルムシュタット城美術館にあるようです。ハンス・ホルバイン(子)-バーゼル市長ヤーコプ・マイアーの聖母-(画像・壁紙)
http://www.salvastyle.com/menu_renaissance/holbein_madonna.html
リンク先左にある
拡大表示
クリックできます。


『イエスの屍』はチョット衝撃ですね。
『白痴』読むのでしたら、どちらの絵画も見ておいたほうが、より作品世界に入る事できると思います。


402P
登場人物にミニヨンという女性がいます。
その名前、ゲーテの『ウィルヘルム・マイスターの修行時代』に登場する少女の名前と一緒だそうです。

ヴィルヘルム・マイスターの修業時代〈上〉 (岩波文庫)

ヴィルヘルム・マイスターの修業時代〈上〉 (岩波文庫)

411P

母国語による文学が生まれたのはプーシキンの功績です。とくに『エヴゲーニー・オネーギン』。これはロシアでなければ表現できない文学です。何しろ韻文で物語が進行するのですからね。

韻文で進行って?
なんか読んでみたい。

オネーギン (岩波文庫 赤604-1)

オネーギン (岩波文庫 赤604-1)


ページ数メモし忘れましたが、
ツルゲーネフの『猟人日記

猟人日記 上 (岩波文庫 赤 608-1)

猟人日記 上 (岩波文庫 赤 608-1)

も出て来ました。
これも気になります。


本が本を呼んで、読みたい本が沢山出てきました。
おかげで、水曜日から新聞読んでいません。
アマゾンで買った三田さんの本、まだ1冊未読ですが、
図書館で予約していた本が借りられるので、今から受け取ってきます。
この本は、かなり前に、去年朝日の書評で紹介されたとき、ここに書いています。
買おうと思った事もあるのですが、本は重たいし、置くところに困るので、三田さんの本は3冊買ってしまいましたが*1、買わずに借りる方針は変化なしです。


#後述
図書館の蔵書、ネット検索したら、三田さんの『白痴』蔵書に入っていて、しかも予約なしですぐ借りられました。
この本初版、2011年1月15日です。
図書館なかなかやるね。
三田さんと村上(春樹)さん、リチャード・バックさんは出た本はできる限り所有する方針なのでまあいいか。

*1:3冊とも図書館が買いそうにないもので