騎士団長殺し お酒と車編

第1部
231P〜232P

「今夜はそろそろ失礼しましょう」と免色は言った。「ウィスキーをご馳走さま。また近いうちに連絡させていただきます」
 免色は月明かりの下で、鮮やかな銀色のジャガーに乗り込んで帰って行った。明けた窓から私に軽く手を振り、私も手を振った。

改行無しで、まだ本文は続きますが、一言。
村上さん初期作品では、飲んで運転するシーン結構書かれていました。
今、酒気帯びや飲酒運転罰則も厳しく、厳しくなるきっかけとなった、いくつかの飲酒運転による死亡事故思い出します。
確かに「飲んだら乗るな」生活の基本になっている気がします。
私も、飲酒の事故が多発して罰則が厳しくなる前は、車どころか、バランスが必要な中型のバイク乗ったことがありました。
事故を起こすことなく、済んで本当に良かったと思います。


以前の村上さんだと、この後書かずに、話を進めていたと記憶していますが、
さすがに、このことで、非難されるのは避けたかったようで、文章続きます。


エンジン音が坂道の下に消えてしまった後で、彼がウィスキーをグラスに一杯飲んでいたことを思い出したが(二杯目は結局口をつけられていなかった)、顔色にもまったく変化はなかったし、しゃべり方や態度も水を飲んだのと変わりなかった。アルコールに強い体質なのだろう。それに長い距離を運転するわけではない。もともと住民しか利用しない道路だし、こんな時刻には対向車も、歩いている人もまずいない。

酒気帯び運転書かないほうが良かったのでは、と思うくらい、長めの文章を続けて書かれてから改行して次の展開になっています。


私の記録*1に間違いが無ければ、お酒と車が絡むシーン作品中に後4箇所(全部で5箇所ですね)出てきますが、いずれも酒気帯び運転はしていません。


引用します。

340P

 それから彼は車を運転して帰っていった。
「ウィスキーをありがとう」と私は礼を行った。まだ五時前だったが、空はずいぶん暗くなっていた。日ごとに夜が長くなっていく季節だった。
「本当は一緒に飲みたいところだが、なにしろ運転があるものでね」と彼は言った。「そのうちに二人でゆっくり腰を据えて飲もう。久しぶりにな」
 そのうちに、と私は言った。

この時飲まずに帰ったのは、免色さんです。


第2部


89P

雨田は白ワインのグラスを注文し、私はペリエを頼んだ。
「これから運転して小田原まで帰らなくちゃならないからね」と私は言った。「ずいぶん遠い道のりだ」


137P

「おたくにウィスキーはありますか?」
シングル・モルトが瓶に半分くらいあります」と私は言った。
「厚かましいお願いですが、それをいただけませんか?オンザロックで」
「もちろんいいですよ。ただ免色さんは車を運転してこられたし・・・・・・」
「タクシーを呼びます」と彼は言った。「私も飲酒運転で免許証を失いたくはありませんから」


170P

「なあ、ところで今夜はここに泊まっていっていいかな?」と雨田は私に尋ねた。「できれば今日は、ゆっくりと腰を据えて、おまえと二人で酒を飲みながら話をしたいんだ。しかし酒を飲んでしまうと運転はできないからな。寝る場所は居間のソファでかまわないよ」
「もちろん」と私は言った。「そもそも君の家だ。好きなだけ泊まっていけばいい」


お酒と車、村上さんかなり慎重に書かれていますね。

*1:記憶はいい加減なので、キチット記録しながら読みました。